この写真がこれほどまでに倫理的な激論を呼んだ背景には、カメラレンズの光学的特性と構図の心理的効果が深く関係しています。カーターは当時、被写体と一定の距離を保ちながら望遠レンズを使用して撮影を行いました。
望遠レンズ特有の「空間の圧縮効果(遠くの背景と手前の被写体の距離が極端に縮まって見える現象)」により、ハゲワシが子どものすぐ背後に迫り、今にも襲いかかろうとしているかのような圧倒的緊迫感が演出されました。この劇的な構図が写真の芸術的評価を高めた反面、読者に「猛禽類に捕食されかけている子供を目の前にしながら悠然とカメラを構えていた」という冷酷な印象を強く植え付ける結果を生んでしまったのです。
さらに、当時の国連スタッフからはジャーナリストに対し「感染症予防および配給活動の混乱を防ぐため、飢餓患者に直接触れてはならない」という厳格な現場指示が出されていました。カーター自身はハゲワシを追い払った後、木の下に座り込んで激しく涙を流し、神に祈りながら煙草を吸っていたと同僚ジャーナリストのジョアン・シルヴァが証言しています。しかし、1枚の写真が持つ視覚的強度の前では、そうした現場の複雑な文脈や撮影者の葛藤は完全に掻き消されてしまいました。