水加減と並んで炊飯の成否を分けるのが、加熱前に行う浸水時間の目安の管理です。日本調理科学会などの学術論文によれば、お米の吸水率は自重の約20〜25%に達した時点で「飽和吸水状態」となります。米粒の中心部(芯)まで均一に水を行き渡らせておかないと、加熱時にデンプンの糊化(アルファ化)が均一に進まず、外側がベチャついて中心に芯が残る原因になります。
必要な浸水時間は、季節や水温によって大きく変動します。水温が高い夏場は吸水が急速に進むため約30分で十分ですが、水温が下がる冬場は吸水速度が鈍るため60分〜90分の時間を確保しなければなりません。春秋の常温であれば45分が理想的な着地点となります。ただし、90分以上水に浸けたまま放置すると、米粒がふやけて細胞壁が破壊され、炊きあがりのコシが失われるだけでなく、雑菌繁殖のリスクが高まるため注意が必要です。
ここで多くの人が疑問を抱くのが、早炊きと通常炊飯の違いです。「電気代や時間の節約のために常に早炊きを使っている」という家庭も少なくありませんが、炊飯器内部で行われている制御プロセスには明確な差が存在します。
通常炊飯モードは、加熱開始前の「予備吸水」と加熱終了後の「蒸らし」がプログラムにあらかじめ組み込まれており、約45〜60分かけて緩やかに昇温・加熱・蒸らしを行います。一方の早炊きモードは、この予備吸水と蒸らしの工程を極限まで削り、最初から一気に高火力で沸騰させて20〜30分で仕上げる仕様です。つまり、事前に十分な浸水を行わずに早炊きボタンを押すと、芯残りと硬さの原因になるということです。逆に言えば、ボウルなどでしっかり40分以上浸水させてから早炊きを使用すれば、時間短縮とふっくらした食感を両立させることができます。