2019年11月の初演『Episode1「What to draw」』の幕が上がった瞬間、劇場の空気は一変しました。暗がりの中に浮かび上がる荘園の不気味な洋館、緻密に作り込まれた小道具、そして何よりボタン目のキャラクターたちが舞台上に実在しているかのような錯覚。ゲームの持つゴシックホラーの質感を極限までステージ上に落とし込んだ『Identity V STAGE』は、単なるキャラクターのトレースにとどまらない演劇的挑戦として高く評価されました。
最大の特徴は、同一の事件や物語を異なる陣営の視点から描く「サバイバー公演」と「ハンター公演」のダブル構成を導入した点にあります。逃げ惑う側の極限状態と心理戦、追う側の孤独や狂気をそれぞれの視点から丁寧に掘り下げることで、原作の背景にある深遠なバックストーリーが立体的に浮き彫りとなりました。観客に「両サイドを観劇しなければ物語の全貌が掴めない」という強い動機を与え、リピーターが続出する要因となったのです。