本作のコントが群を抜いて優れていた最大の要因は、熟練の職人芸と現代的なリアクションが衝突して生じた、計算し尽くされたアンサンブルキャストの存在です。
番組の主軸を担った出演陣は、それぞれが明確かつ代替不能な役割を演じ切っていました。
千鳥・大悟さんは、志村さんにとって「晩年最大の理解者であり、芸の継承者」とも呼べる存在でした。私生活でも週に幾度となく杯を交わしていた二人の信頼関係は、画面越しにも明確に伝わってきました。大悟さんは大先輩である志村さんに対して決して萎縮せず、絶妙な「間」でボケを拾い、時に酒臭いトボけたツッコミを入れます。この緊張感と親密さの同居が、コントに生々しいリアリティをもたらしました。大悟さんは後年の追悼番組やインタビューにおいて、「志村さんのコントは、稽古通りにやる美しさと、本番で急に裏切ってくる怖さの両方があった。あの空間は芸人としての宝」と述懐しています。
一方、娘役や店員役として抜群の存在感を放ったのが足立梨花さんと磯山さやかさんです。特に足立さんは、小生意気でありながらどこか憎めない現代の娘像を自然体で演じ、志村さん演じる父親の頑固さや哀愁を引き出すトリガーとして機能しました。磯山さんは下町情緒あふれるお姉さん、あるいは包容力のある女将として、ボケとツッコミの交通整理を完璧にこなしました。
そして、空間全体に爆発的なエネルギーを注入していたのがベテラン・柴田理恵さんです。柴田さんの持つ土着的な生命力と予測不能なリアクションは、整然としがちなシチュエーション劇を心地よく破壊し、志村さんのアドリブを極限まで引き出す起爆剤となっていました。