彼の作品には、これまでの日本映画にありがちだった「お決まりの涙」や「説明過多なセリフ」が一切存在しない。カメラが捉えるのは、都市の片隅で息を潜めて生きる若者たちのリアルな体温と、言葉にならない摩擦音だけだ。徹底したリアリズム。それが彼のシグネチャーである。
オーディションで選ばれた無名のキャストたちから、狂気とも言える本音を引き出す演出術は、かつての巨匠たちを彷彿とさせる。しかし、そのアプローチははるかにモダンだ。現場では台本をほとんど使わず、その場の空気感と即興性を重視する。この生々しさが、言語の壁を越えて海外の批評家たちの心を鷲掴みにした。