調味料業界において長年語り継がれているのが、中濃ソース関東関西の地域差です。スーパーマーケットの棚卸しデータやPOSデータを定点観測すると、東日本と西日本で売れ筋のラインナップが劇的に分断されている実態が浮き彫りになります。
東京都をはじめとする東日本エリアでは、業界の雄であるブルドックソースが圧倒的なシェアを握っています。関東の家庭では「ソースといえば中濃」という認識が深く根付いており、一家に1本だけ置く万能調味料として中濃ソースが選ばれ続けてきました。かつて高度経済成長期に首都圏へ流入した単身世帯や核家族にとって、1本で揚げ物にも料理の味付けにも対応できる利便性が時代のニーズに合致したためです。
一方、関西エリアに足を踏み入れると光景は一変します。京阪神を中心とする西日本では、カゴメソースやオリバーソース、イカリソースといった老舗メーカーが強固な地盤を築いており、食卓には「ウスターソース」と「とんかつソース(またはお好み焼き・たこ焼き専用ソース)」の2本が常備されるのが伝統的なスタイルです。関西のスーパーでは、中濃ソースの棚割りが極端に狭い、あるいは棚の隅にわずかに置かれているだけという店舗も珍しくありません。
「粉もん文化」と「出汁文化」が成熟している関西では、お好み焼きには濃厚な甘口ソースを塗り、串カツや天ぷら、キャベツにはサラサラとしたウスターソースを浸すという明確な用途分離が完成しています。「どっちつかずの中濃は使い道に困る」という関西特有の合理的な味覚志向が、長年にわたる東西の流通格差を今なお維持させています。