お年玉の準備における最大の難関は、何と言っても新札の調達だ。日本銀行が威信をかけて推し進めた新紙幣発行プロジェクト以降、市場に出回る紙幣の主役は一万円札の渋沢栄一や千円札の北里柴三郎へと切り替わった。近代日本経済の父と近代日本医学の父が、ポチ袋の中から次代を担う子供たちを見つめ返している。
年末の銀行窓口や両替機が長蛇の列を成す光景は、もはや風物詩を通り越して一種の戦場だ。シワひとつない紙幣を包む理由は、単なる見栄えの良さではない。「あなたのために、前もって時間を割いて新札を工面してきました」という、目に見えない真心を可視化するための儀礼だからだ。
前もって準備できなかったからといって、財布にあったくしゃくしゃの千円札をそのまま突っ込むのは、相手に対する明確な怠慢と受け取られかねない。やむを得ない場合は、低温のアイロンを当ててシワを伸ばすなどの応急処置を施してでも、端正な状態で渡すのが大人の矜持というものだろう。