「新幹線代金にわずか数千円足しただけで、1泊付きのプランが買えるのはなぜか」という疑問は、ネット上でも長年議論されてきました。その背後には、鉄道会社と旅行代理店の間で長年運用されている「包括運賃(IT運賃:Inclusive Tour Tariff)」という明確なビジネスモデルが存在します。
新幹線の定価きっぷ(片道普通乗車券+指定席特急券)は、鉄道営業法や運賃認可制度により、鉄道会社が勝手に日替わりで大幅値引きすることができません。しかし、宿泊とセットにした「募集型企画旅行(パッケージツアー)」の形態をとる場合、JR各社は旅行会社に対して特別な卸値(非公開の団体・包括仕入れ価格)で座席を提供できます。この包括運賃にホテルの仕入れ原価を乗せることで、定価の合計額より圧倒的に安い総額表示が実現するわけです。
ホテル側にも強固な動機があります。ビジネスホテルやシティホテルは、空室のまま深夜を迎えるとその部屋の売上は永久にゼロになります。定価を下げて公式販売するとブランド価値や通常相場が崩れるため、新幹線とのセットプラン内に「内訳非公開」の形で組み込み、安価で確実に客室を埋めるレベニューマネジメントを実行しています。つまり、新幹線ホテルパック格安の理由は怪しい裏技ではなく、鉄道とホテルの「空席・空室の在庫リスクを回避する共同エコシステム」そのものにあります。