希代のメロディメーカーであるジェフ・リンがこの曲を着想した舞台は、まばゆいカリフォルニアのビーチでも、活気あるロンドンのスタジオでもない。1977年の初夏、彼が身を寄せていたのは、深い霧と止まない雨に閉ざされたスイス・アルプスの山荘だった。
名盤『アウト・オブ・ザ・ブルー』の楽曲制作に追われていたリンは、重度のスランプに陥っていた。窓の外は2週間にわたって分厚い暗雲が立ち込め、視界は真っ白。ピアノの前に座っても、頭に浮かぶのは重苦しいフレーズばかりで、作業は完全に暗礁に乗り上げていた。プレッシャーだけが容赦なく積み重なっていく。
転機は唐突に訪れた。ある朝、目を覚ますと奇跡のように雲が晴れ渡り、息を呑むほど鮮やかな青空と巨大なアルプスの山肌が姿を現したのだ。山々に反射する圧倒的な太陽の光に打たれたリンは、衝動的にペンを走らせた。「青空が戻ってきた」。その狂喜乱舞の感情が、そのままメロディと歌詞へと昇華された。彼はその後のわずか数日間で14曲もの楽曲を一気に書き上げ、その頂点に位置したのがこの名曲だった。