エントランスを抜けると、目の前に広がるのは緑豊かな大涌谷の山並みを借景にした優美なイタリアンガーデンです。訪れる人々をまず圧倒するのが、庭園中央の橋に架かるクリスタルガラスのアーチ「光の回廊」。高さ約9メートル、全長約10メートルにおよぶアーチには、約16万粒ものクリスタルガラスが隙間なく敷き詰められています。
現地に立つと、風が通り抜けるたびにガラス粒同士が微かに触れ合い、清らかな音色を響かせます。風と太陽光が連動し、無数のプリズムが七色の虹となって周囲へ乱反射する光景は、息を呑むほどの鮮烈さです。春から夏にかけてはガラスの紫陽花や新緑、秋にはガラスのススキと本物のススキが競演し、冬には巨大なクリスタルツリーが設置されるなど、季節ごとの演出力にも抜かりがありません。
庭園奥に佇む「ヴェネチアン・グラス美術館」の館内では、常設および特別企画として「ヴェネチアンガラス名品展」が開催されています。15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの王侯貴族を熱狂させた門外不出の工芸品が、重厚な展示空間に並びます。
特に見逃せないのが、当時の高度な職人技法を今に伝える「レース・グラス」や、酸化金属の発色を利用した「モザイク・グラス」、繊細な脚部を持つ優雅なゴブレットです。現地の解説員によると、「ヴェネチア共和国はガラス職人の島外脱出を死罪をもって禁じ、技術の秘匿に命をかけていた」といい、展示品の一つひとつに国家の命運を賭けた職人たちの執念と歴史のドラマが刻まれています。単なる装飾品を超えた学術的・美術的価値の深さは、本物志向の鑑賞者を唸らせるに十分な説得力を備えています。
また、旅程の天候悪化を心配する旅行者も多いですが、この場所には雨の日の楽しみ方にも独自の妙味があります。雨滴がクリスタルガラスの表面に付着すると、水滴自体がレンズの役割を果たし、晴天時とは全く異なるしっとりとした濡れ色の煌めきを見せてくれます。さらに、屋内展示館やガラスショップ、カフェレストランが屋根付き通路や近接エリアで結ばれているため、足元を気にせず雨天観光の避難先としても上質な時間を過ごせます。