デリーの歴史は、創業者である田中敏夫氏が1956(昭和31)年に文京区湯島・上野広小路の地にわずか数坪の店舗を構えたことから始まります。当時、日本国内で提供されていたカレーといえば、イギリス経由で伝わった小麦粉とルウによるもったりとした欧風カレーが主流でした。その時代にあって、本場インドやパキスタンの香辛料文化に衝撃を受けた田中氏は、現地のスパイス配合を取り入れつつも「日本人の味覚を大切に、毎日でも食べ飽きないカレー」を掲げて独自の味覚探求を開始しました。
創業当初はスパイスの強烈な刺激が受け入れられず苦戦を強いられたものの、油脂に頼らず玉ねぎやブイヨン、挽きたてのスパイスが織りなすサラリとしたスープ状のカレーは、次第に近隣の東京大学関係者や谷根千・上野界隈の文化人たちの舌を掴んでいきました。現在、デリーは上野店のほか銀座店、東京ミッドタウン店の3店舗を展開していますが、カウンター越しに厨房の熱気がダイレクトに伝わる上野店こそが、すべてのデリーファンにとっての聖地であり続けています。