ビジネスパーソンが最も神経を尖らせるのが、お手を拝借の敬語としての適切さと目上へのマナーです。「拝借」自体は由緒ある謙譲語ですが、宴席の終盤で「それでは皆様、お手を拝借!」と語尾を省略して言い放つと、文法的には謙譲語でありながら、語感としては相手に行動を強制する命令形に近いニュアンスを与えてしまいます。
人事コンサルタントや現場の秘書室関係者へのヒアリングでも、「役員や社外の重要顧客が同席するオフィシャルな宴席において、若手社員が号令のように叫ぶ『お手を拝借!』には違和感を覚える」という指摘が定点観測されています。敬意を損なわずに場を仕切るためには、以下のようなクッション言葉と丁寧な語尾の接続が不可欠です。
- 社内上司・役員同席の場合:「僭越ではございますが、皆様にお手を拝借いたしたく存じます。」
- 取引先・接待宴席の場合:「大変恐縮ではございますが、ご列席の皆様にお手を拝借願えますでしょうか。」
- 格式高い公式行事の場合:「ご参会の皆様、ご唱和のほどお願い申し上げます。」
一方で、指名された側ではなく周囲にいる参加者側のお手を拝借への返答や返し方にもスマートな作法が存在します。締め手が「お手を拝借」と述べたら、言葉で「はい」と大声で返すのではなく、持っているグラスや箸を静かにテーブルに置き、両手を胸の高さに構えて視線を締め手に集めるのが洗練された大人の振る舞いです。