ネット上やSNSでは来日のたびに、「世界的な不動産王であるトランプ氏なら、自身のブランドであるトランプタワーホテルやトランプインターナショナルホテルに泊まるべきではないのか」という疑問の声が上がります。しかし、ここには法的な壁とビジネス上の決定的な事実関係があります。
まず前提として、日本国内にトランプブランドのホテルやタワーレジデンスは存在しません。かつてバブル期や2010年代半ばに、都心の超一等地に「トランプタワー東京」を誘致する構想がディベロッパー間で幾度となく浮上したものの、用地買収費用の高騰やライセンス契約条件の折り合いがつかず、実現には至りませんでした。
さらに重要なのが、合衆国憲法が定める「外国報酬条項(Emoluments Clause)」および利益相反の制約です。現職大統領が自身の所有する私営ホテルに公費を使って滞在・警備部隊を宿泊させた場合、公職を利用した私的蓄財として米国内で激しい司法追及と世論の批判を浴びることになります。そのため海外歴訪では、あえて自社資産とは無縁な現地最高峰の歴史的ナショナルホテル(パレスホテルや帝国ホテル)に滞在することが、政治的リスクを避けるための鉄則となっているのです。