イベント会場でコノハけいぶに出くわした幼児が、親の後ろに隠れて大号泣する光景は、愛知県の警察イベントにおける「お約束」として語り継がれています。大手掲示板やSNS上でも、「幼少期に見たコノハけいぶが本気でトラウマだった」「無表情のまま直立不動で敬礼してくる姿が夢に出た」という証言が後を絶ちません。なぜ、本来親しまれるべき警察マスコットが、これほどまでに「怖い」「不気味」と評されてしまうのでしょうか。
造形心理学および視覚伝達の観点から分析すると、理由は大きく3点に集約されます。
第1に、夜行性猛禽類特有の「無瞬き・固定視線」の完全再現です。モチーフとなったフクロウ科のコノハズクは、暗闇で獲物を狙うため大きく見開かれた眼球を持っています。コノハけいぶのデザインもこの特徴を忠実に引き継ぎ、鮮やかな黄色い強膜に小さな黒い瞳孔が描かれています。人間は本能的に「視線が合っているのか逸れているのか判別しにくい目」に対して警戒心を抱く心理特性があり、これが子供たちに恐怖心を与える決定打となっています。
第2に、平成初期(1991年)の着ぐるみ設計思想による「不気味の谷現象」です。現代の「ゆるキャラ」は、頭身を低くし、輪郭を極限まで丸め、柔らかい起毛素材を用いることで幼児性を強調します。しかし、バブル崩壊直後に製作された初期〜中期型のコノハけいぶの着ぐるみは、警察官としての威厳を保つためか、頭部がソリッドで硬質なウレタン・FRP調の質感を残しており、シャープな嘴(くちばし)と角張った警察制帽が組み合わされていました。この「リアルな鳥類と人間の中途半端な融合」が、見る者に違和感を抱かせるのです。
第3に、警察官特有の「キレのある挙動」とのギャップが挙げられます。中にいる警察官や関係者の立ち振る舞いが実直で隙がないため、着ぐるみでありながら背筋がピンと伸び、鋭い挙動で敬礼を繰り出します。愛嬌を振りまくマスコットの動きとは一線を画すプロフェッショナルな動作が、結果としてシュールさを極限まで高めているという現場の声も聞かれます。