『完全無欠のロックンローラー』の歌詞を読み解くと、単なるナンセンスソングにとどまらない、当時の世相に対する極めてシャープな風刺構造が浮き彫りになります。物語の語り手は、一見すると不良の世界に生きるツッパリ少年ですが、その行動や言動はどこかピントがずれており、強がりと小心さが同居しています。
歌詞中盤で描かれる「ポニーテールの彼女」にフラれる描写や、警察(パトカー)のサイレンに怯えて逃げ出す展開は、当時のシリアスな反逆劇を「笑い」へと昇華させる心理的脱色装置として機能していました。社会学的な観点から見れば、1970年代末から1980年代前半にかけて深刻化していた校内暴力や少年非行という重い社会問題を、ポップカルチャーの側から無毒化し、大衆が安心して消費できるエンターテインメントへと変換したのがこの楽曲の真の功績といえます。
また、音楽的な構造も見逃せません。楽曲を支えるコード進行は、ロカビリーや初期ロックンロールの王道である「スリーコード(I - IV - V)」を忠実に踏襲しています。キーをAメジャーとした場合、A・D・Eのコードをベースに小気味よい8ビートを刻み、キャッチーなコール&レスポンスとブラスセクションのキメを配置。歌詞のコミカルさに耳を奪われがちですが、土台となるバッキングは極めてタイトでグルーヴィーであり、ロックンロールに対する深い敬意と音楽的教養がなければ成立しない職人技のアンサンブルでした。