健全な郷土芸能であった野球拳が「脱衣ゲーム」として全国津々浦々に定着した背景には、1969年(昭和44年)に日本テレビ系列で放送されたバラエティ番組『コント55号の裏番組をぶっとばせ!』の強烈な影響があります。
当時、強敵だったNHK大河ドラマなどの裏番組を打ち崩す切り札として、萩本欽一さんと坂上二郎さんのコント55号を司会に据え、ゲストがじゃんけんで負けるたびに服を脱いでいく演出を導入しました。この企画が最高視聴率30%を超える空前の大ヒットとなったことで、「野球拳=服を脱ぐゲーム」という誤ったパロディが強烈なインパクトとともに刷り込まれてしまったのです。
この事態に、発祥の地である松山市民や考案者の前田伍健氏は深い困惑と悲しみを覚えました。伍健氏は「自らが精魂込めて育てた郷土芸能が卑俗化されてしまった」と心を痛め、晩年まで正調野球拳の正しい姿を伝える普及活動に心血を注ぎました。