過去の確執が沈静化した後も、なぜ視聴者の間では「仲が悪いのではないか」という疑問が消えないのでしょうか。知恵袋やSNSなどのコミュニティでは、「最近『有吉の壁』で3人揃ってコントをしていない」「向井と尾形、あるいは菅と向井の組み合わせばかりで別行動が多い」という指摘が定期的に投稿されています。
この疑問に対する現場の実態は、不仲による分裂ではなく「純粋なネタ作りの効率化とテレビ的実利」です。バラエティ番組関係者の証言によると、『有吉の壁』のロケでは1日に何十本ものネタ出しが求められます。3人全員が同じネタに縛られるよりも、2人・1人に分かれて複数本のネタを撮影した方が、番組でオンエアされる確率が数学的に高まるという制作上の判断が働いています。
さらに、番組内で「尾形が持ってきたネタの提案を菅がバッサリ断った」というエピソードが面白おかしく紹介されたこともありました。しかしこれも、かつてのような感情的な敵対ではありません。尾形の熱量任せの荒唐無稽なアイデアに対し、菅が客観的かつシュールな作家目線で冷静にスクリーニングをかけているに過ぎず、クリエイティブ上の健全なやりとりがバラエティのネタとして昇華されているのです。
また、衝突エピソードとして知られるのが、『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)に出演した際に明かされた、尾形貴弘と菅良太郎の「つかみ合いの大喧嘩」です。普段は温厚で滅多に怒らない菅が、尾形と胸ぐらを掴み合うほどの衝突に発展したのは、後にも先にもこの1回だけだったといいます。その理由は、尾形が良かれと思って行った行動が菅のポリシーと衝突したことによるものでした。しかし、感情を滅多に表に出さない菅が本気でぶつかったことで、かえって2人の間の見えない壁が取り払われ、現在の風通しの良い関係性に繋がったと双方が認めています。
『ロンドンハーツ』や『水曜日のダウンタウン』での尾形への執拗ないじりや他の芸人との小競り合いも、視聴者が不仲と錯覚しやすい一因です。直情型で何事にも全力疾走する尾形のキャラクターは、ドッキリのターゲットとしてテレビ界最高峰の打率を誇ります。番組側が求めるリアクションを120%で返す尾形と、それを冷静に捌く向井のツッコミは、高度に計算された「ビジネス不仲」の様式美であり、本物の確執とは根本的に異なるものです。