鮮魚店や通信販売で元気な活クリガニを入手した際、絶対にやってはならない最大の過ちが「生きたまま沸騰した鍋に放り込むこと」です。カニ類は急激な熱を感じると、自衛本能から自らの脚を関節から切り離す「自切(じせつ)」を起こします。脚が脱落した穴から貴重なカニミソや内子が熱湯の中へ一気に流れ出し、鍋の中が濁るだけでなく、仕上がりはスカスカの無残な状態と化してしまいます。
旨味の流出を完全に防ぐためには、加熱前の「締め」と物理的な洗浄が生命線となります。
手順1:活クリガニの締め方(2つの選択肢)
初心者にとって最も安全かつ確実なのは「氷水締め」です。ボウルにたっぷりの氷と水を張り、活きたクリガニを完全に水没させて15分〜20分間放置します。変温動物であるカニは急激な冷水で仮死状態(冬眠状態)に陥り、完全に動きを止めます。急ぎの場合は、真水(水道水)に15分浸けておくだけでも浸透圧の差で絶命します。より確実を期すプロの技としては、口元の中央にある急所に千枚通しやアイスピックを深く差し込み、神経を破壊して即座に脱力させる手法も有効です。
手順2:泥と臭みを一掃する下処理
動かなくなったことを確認したら、流水の下でたわしや使い古した清潔な歯ブラシを使い、甲羅の表面、脚の付け根、関節の細かい毛に付着した泥や砂を徹底的に洗い落とします。特に「ふんどし」と呼ばれる腹部の三角プレートの隙間には細かな砂が溜まりやすいため、指で少し浮かせながら隙間まで水洗いするのが生臭さを残さない秘訣です。ただし、この段階でふんどしを完全にちぎり取ってはいけません。甲羅内のミソを留めるフタの役割を果たしているためです。