プロの料理人たちが現場で実践しているクラフトの活用術は、単に仕上がりの皿へ振りかけるだけに留まらない。チーズの本質が「熟成によって濃縮された旨味成分(グルタミン酸)」である点に着目したテクニックがいくつか存在する。
その代表例が、定番パスタであるカルボナーラのソース設計だ。本来はペコリーノ・ロマーノや生クリームを用いない伝統手法が語られがちだが、家庭のフライパンで失敗なく濃厚なコクを出すためには、ボウルで全卵とクラフトの粉チーズを「ペースト状になるまで」先に練り合わせておく手法が極めて有効だ。粉末が卵の水分を適度に吸い込み、パスタの茹で汁と合流した際にソースが分離するリスクを劇的に下げる乳化剤の役割を果たす。
さらに、フライパンにチーズだけを薄く円形に広げて中火で焼き上げる「フリコ(カリカリチーズ焼き)」も秀逸だ。添加物のセルロースが入っていないため、油を引かなくてもチーズ自体の脂分で均一に溶け、冷めると極上のクリスピーなチップスへと変化する。日々の味噌汁の仕上げにティースプーン半分を加える、あるいは鶏の唐揚げの下味に塩の代わりとして揉み込むといったアプローチも、動物性のイノシン酸とチーズのグルタミン酸による相乗効果を生み出し、料理全体の味の奥行きを一変させる。