なぜここまでアルミ缶の価値が高騰し、高値を維持しているのでしょうか。背後には、単なる物価高にとどまらない、国際的な産業構造の転換とエネルギー情勢が深く横たわっています。
最大の要因は、アルミニウムという金属が持つ特殊な精錬特性にあります。アルミニウムは天然鉱石のボーキサイトから新地金を作る際、膨大な電気エネルギーを消費するため、業界内では古くから「電気の缶詰」と称されてきました。これに対し、回収された使用済みアルミ缶を再溶解して再生アルミ地金を作る場合、必要なエネルギーは新地金製造時のわずか約3%で済みます。つまり、エネルギー消費とCO2排出量を97%も削減できるのです。
世界中でカーボンニュートラルやGX(グリーントランスフォーメーション)の達成が義務付けられる中、自動車産業をはじめとする製造業各社は、車体の軽量化と環境負荷低減のために再生アルミニウムの確保へ血眼になっています。さらに、国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)のアルミ相場の堅調さに加え、為替の円安基調が国内のスクラップ輸出価格を押し上げている構造も無視できません。かつて「たかがゴミ」と見なされていた空き缶は、今や「最も環境負荷の低い戦略的循環資源」へとその座を格上げされたと言えます。