『世界の中心で愛を叫ぶ』の映画版(行定勲監督、2004年5月公開)とドラマ版(TBS系金曜ドラマ、2004年7月〜9月放送)は、ほぼ同時期に世に送り出されながら、物語の骨格と演出アプローチにおいて鮮やかな対比を見せました。
最大の相違点は「時間軸の構成」と「結末に至る心理描写」です。映画版は、大人になったサク(大沢たかお)が、失踪した婚約者・律子(柴咲コウ)を追って故郷の四国へ戻り、自らの過去と対峙する追憶のロードムービーとして進行します。律子はかつて、入院中のアキ(長澤まさみ)からサク(森山未來)へのカセットテープを預かりながら、交通事故に遭い届けることができなかったという重い十字架を背負っていました。映画の結末で二人がオーストラリアのウルルに立ち、風の中にアキの遺灰を撒くシーンは、過去の後悔に囚われていた二人が同時に救済され、「過去を愛したまま、未来へ歩き出す」ための儀式として描かれています。
一方、全11話で丁寧に紡がれたドラマ版は、サク(高校時代:山田孝之)とアキ(綾瀬はるか)が出会い、惹かれ合い、白血病という残酷な現実に抗いながら過ごした「何気ない日常の眩しさ」に尺の大半を割いています。現代パートのサク(緒形直人)は、アキの死から17年間、魂が抜け落ちたように立ち止まったままの大学院生として登場します。ドラマ版の結末は、恩師・谷田部先生(松下由樹)や、サクの痛みに寄り添い続けたシングルマザー・小林明希(桜井幸子)との対話を通じて、サクがようやく「アキのいない世界で生きる覚悟」を固め、遺言であったオーストラリアの大地へ向かう構成です。喪失の悲嘆を乗り越えるプロセスの緻密さにおいて、ドラマ版は人間ドラマとしての深みを極めました。