連載開始から半世紀以上が経過した現在でも、アンパンマンの物語は色褪せるどころか、混迷を深める現代社会においてより一層の輝きを放っています。
アンパンマンは、宿敵であるばいきんまんを完全に消滅させようとはしません。悪さを止めさせ、お腹を空かせている時にはばいきんまんにさえパンを差し出すことがあります。「正義」と「悪」を二項対立で断罪するのではなく、命あるすべてのものへの慈悲と共存を重んじる視点が貫かれているのです。
「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」――主題歌『アンパンマンのマーチ』に込められた問いかけは、やなせ氏が過酷な人生の中で自分自身に投げかけ続けた命題でした。自己犠牲を伴いながらも誰かのために生きる温もりは、時代が変わっても決して変わることのない普遍的な希望として、これからも子どもたちと大人たちの胸を打ち続けます。