1989年に発覚した「サンゴ落書事件」は、取材倫理の根底を揺るがす衝撃的な事件だった。沖縄の美しい珊瑚礁に「K・Y」というイニシャルが刻まれた写真を掲載し、環境破壊を告発した記事。しかし、その実態は取材記者自身がカメラのレンズ越しに自らの手でサンゴを傷つけて捏造した写真であったことが判明する。
社会を啓発するという名目のもとで、自ら事件を作り出す。この常軌を逸した「自作自演」は、言論機関としての自浄作用の欠如を露呈させた。批判の嵐が吹き荒れる中、朝日新聞社は謝罪に追い込まれたが、この時点で顕在化した「結論ありきの取材スタイル」への疑念は、その後の報道問題の伏線となっていく。