この未曾有の事態が表面化したのは、2023年9月30日朝のことでした。宝塚歌劇団宙組に所属していた当時25歳の劇団員(娘役)が、兵庫県宝塚市内の自宅マンション敷地内で倒れているのが発見され、その場で死亡が確認されたのです。前日に初日を迎えたばかりの宙組本拠地公演『PAGAD(パガド)』の渦中での悲劇でした。
報道各社や遺族側代理人が公開した詳細な資料によると、彼女の心身を極限まで追い詰めた直接の引き金は、想像を絶する時間外労働の過密度でした。劇団員は当時、入団7年目という「下級生を束ね、新人公演の責任を背負う」極めて重いポジションにありました。遺族側が提出した通信履歴やスマートフォンの稼働記録の分析では、急死直前の1か月間における時間外労働は月277時間に達し、連日の睡眠時間はわずか1〜2時間程度に削り取られていた事実が明らかになっています。
さらに週刊誌報道を機に世間の耳目を集めたのが、ヘアアイロンをめぐるトラブルの詳細です。2021年夏、上級生がヘアアイロンで髪を巻く指導を行った際、被害者の額に押し当てられる形となり、全治1か月の火傷を負ったとされる出来事です。当初、劇団側はこの報道を「事実無根」と一蹴しましたが、遺族側は受傷直後の写真や親族へ送られた切迫したメッセージを公開。日常化していた感情的な叱責、大声での罵倒、そして集団での吊るし上げに近い「ダメ出し」の現場が次第に浮き彫りとなっていきました。