美術館南側に広がる安曇野ちひろ公園の一角には、どこか懐かしい緑色の車輪が静止している。「トットちゃん広場」だ。同館の館長を長く務める黒柳徹子の自伝的代表作『窓ぎわのトットちゃん』に登場する「電車の教室」が、当時の車両(モハとデハ)を用いて見事に再現されている。
車両に足を踏み入れると、古い木製床の軋みとともに、子どもの頃の記憶が不意に呼び起こされる。アニメーション映画『窓ぎわのトットちゃん』が公開され、Amazon Prime Videoなどの配信を通じて世界的な再評価が進むいま、物語の追体験を求めて訪れる若い世代の姿も目立つ。電車の窓枠越しに広がる安曇野の草原を眺めていると、自由と多様性を重んじたトモエ学園の教育精神が、風に乗って届いてくるようだ。