大人になって初めて知能の低さを自覚した当事者の多くは、診断に至るまでに深い心理的トラウマを抱えています。
当事者会や各種手記で語られる証言には、共通する痛烈な叫びがあります。IT企業に就職したものの書類不備や指示の取り違えを繰り返し、適応障害で休職した30代男性は次のように語っています。
「学生時代はテストで赤点を取らないよう丸暗記してなんとか乗り切ってきました。しかし会社に入ると、『自分の頭で考えて動け』『全体のバランスを見て』と言われ、何をどうすればいいのか全く理解できませんでした。上司からは毎日『ふざけているのか』と怒鳴られ、毎朝駅のトイレで嘔吐していました。精神科でWAIS-IV検査を受け、IQ68で軽度知的障害だと告げられた時、ショックよりも先に『自分が悪者だったわけではなかったんだ』と涙が止まりませんでした」
精神科医療の臨床データによると、大人になってから知的障害や境界知能と診断された患者の60%以上がうつ病や適応障害、パニック障害などの二次障害を併発している実態があります。社会的な無理解と自己否定の積み重ねが、精神疾患を引き起こしているのです。