2歳児にルールは通用しない。かつてそう信じられていた時代があった。しかし、スイスの碩学ジャン・ピアジェが提唱した認知発達理論を紐解けば、この時期は「前操作期」の入り口にあたる。すべてが自分の視線を中心に回る自己中心性の真っ只中にいながらも、外界の規則性に気づき、それを真似る能力が急速に立ち上がる過渡期なのだ。
こども家庭庁が発信する乳幼児期の成育指針でも、近年ひときわ重みを持って語られるのが非認知能力の育成である。とりわけ重要なのが、自分の感情や衝動をコントロールする自己統制の芽生えだ。「待つ」「止まる」「交代する」。これらは大人にとっては些細な所作に過ぎない。だが、2歳児にとって、走り出したい足を一瞬止めることは、脳の前頭前野を総動員する一大事業に他ならない。
幼児教育の文脈において、この時期のルール遊びは「訓練」ではなく「快感の発見」であるべきだと専門家たちは口を揃える。決まりを守ったから褒められるのではない。決まりがあるからこそ、次に来る展開が予測でき、そのスリルを仲間や親と分かち合える。この認知的快感こそが、幼い心に社会性の種を蒔く。