ネット上のブログプラットフォームやSNSに投稿された「インフルエンザ脳症闘病記ブログ」を読み解くと、多くの保護者が同じ痛恨のトラウマを抱えている事実に直面します。手記の中で最も頻繁に繰り返されるフレーズは、「あの時気づいていれば」という過去への激しい悔恨です。
ある母親の手記には、発症当日の様子が克明に記されています。
「夕方に38.5度の熱が出たけれど、食欲も少しあり、普通に受け答えができていた。『いつもの風邪だろう』と横に寝かせた深夜2時、突然飛び起きて『天井に黒い虫がいっぱいいる!助けて!』と叫び出しました。高熱のときの『熱せん妄』だと思い込み、『大丈夫だよ、ママがいるよ』と抱きしめて再び寝かせてしまった。翌朝、いくら揺さぶっても娘の目は虚ろで、視線が宙を泳いでいたのです。あの深夜に救急車を呼んでいれば、重い後遺症を残さずに済んだのではないかと、何年経っても自分を許すことができません」
こうした告白から浮き彫りになるのは、「典型的な初期症状の誤認」です。小児の高熱時には一時的な幻視や辻褄の合わない発言が見られることが珍しくないため、多くの親が「高熱による一時的な寝ぼけ」と解釈して様子を見てしまいます。しかし、脳症による中枢神経障害は、その静かな油断の隙を突いて不可逆的なダメージを進行させます。
さらにブログで目立つもう一つの告白が、インフルエンザワクチン未接種の後悔です。「副反応が心配だった」「多忙で予約が取れなかった」といった理由で見送った結果、重症化させてしまった親たちの苦悩は根深いものがあります。小児科領域の疫学調査でも示されている通り、インフルエンザワクチンは発症そのものを100%防ぐものではありませんが、脳症をはじめとする重症化リスクを抑制する有効な予防手段として位置づけられています。「予防接種を受けさせていれば違う未来があったのではないか」という自責の念は、病気の回復後も保護者の心に重い十字架として残り続けています。