犬が人の手を舐める動機を紐解く上で、最も基本的かつ健全な領域に位置づけられるのが、親愛の情とコミュニケーションです。犬の行動学最新知見によると、犬が飼い主を舐める際、双方の脳内では「オキシトシン」と呼ばれる絆形成ホルモンの分泌が促進されることが確認されています。子犬期に母犬から全身を舐められて安心感を得た記憶が、成長後も飼い主に対するグルーミング行動として再現されているのです。
野生のイヌ科動物の習性から見ると、成犬の口元を舐めて食べ物をねだる挨拶行動が、人間社会に適応する過程で飼い主の「手」へと転移したと考えられています。手は撫でてくれる部位であり、食事やおやつを与えてくれる存在そのものです。そのため、犬が手を舐める心理には「あなたを受け入れています」という飼い主への信頼と服従の感情が色濃く反映されています。
ただし、純粋な犬の愛情表現サインとしての手舐めには明確な特徴があります。犬の体が適度に脱力し、尾がゆったりと中程度の高さで振られ、視線が柔らかい状態で行われます。時間にして1分から2分程度で犬自身が満足し、自然と別の行動に移るのが健康的なスキンシップの目安です。