脚本家・倉本聰の筆が紡ぎ出す言葉は、役者に一切のアドリブを許さない。語尾の「てにをは」ひとつ、息継ぎのタイミングひとつにまで緻密な計算と魂が込められている。岩城滉一にとって、それは役者人生における最大の試練であり、同時に最高の転機となった。
「役を演じるのではなく、その人間としてそこで呼吸しろ」。倉本聰から浴びせられる容赦のない指導に対し、岩城は自らの身体感覚を研ぎ澄ませてぶつかっていった。カッコつけることを徹底的に禁じられ、格好悪さや無様さをさらけ出すことの尊さを知る。脚本の行間に潜む人間の業や哀愁を身体に染み込ませるプロセスは、岩城を単なる人気スターから唯一無二の表現者へと昇華させた。