2012年、入団4年目という異例の早さで月組トップ娘役に就任した愛希れいか。彼女の宝塚時代を語る上で極めて重要なのは、龍真咲と珠城りょうという個性の異なる2代のトップスターの相手役を務め上げた事実です。
就任当初、圧倒的な華とカリスマ性を持つ龍真咲の相手役として『ロミオとジュリエット』のジュリエット役で大劇場お披露目を果たしました。龍真咲の先鋭的なスター性に食らいつき、自身の表現力を極限まで磨き上げた時期といえます。龍真咲の退団後、2016年からは頼もしい包容力を誇る珠城りょうを相手役に迎え、盤石のコンビネーションを確立。月組の屋台骨として組全体を牽引しました。
そしてファンの間で語り継がれるのが「宝塚退団理由」です。彼女が選んだ退団公演は、2018年のミュージカル『エリザベート -愛と死の輪舞-』でした。宝塚歌劇において、通常は男役トップスターの退団公演となることが多い大作本公演で、娘役でありながらタイトルロールのエリザベート役を演じて退団するという、歴史的にも極めて異例の栄誉を手にしました。
関係者の証言や当時の退団会見での言葉を総合すると、退団理由は「娘役としてやり残したことがないほど役を全うしたこと」、そして「6年7ヶ月という重責を果たし、一人の舞台人として外の世界へ挑む決意が固まったこと」にあります。不仲やトラブルによるものでは一切なく、劇団とファンから最大の賛辞を贈られての完全燃焼による円満退団でした。