恵方巻きの原点には諸説存在するが、最も有力とされるのが幕末から明治時代にかけての大阪・船場(せんば)や道頓堀周辺の風習だ。商人や芸妓たちが節分の日に、その年の吉方(恵方)を向いて太巻きを切り分けずに一本丸ごと食べ、商売繁盛や家内安全を祈願したのが始まりと言われている。
包丁を入れずに「縁を切らない」ように丸ごと食べるスタイルや、しゃべらずに一気に食べることで「福を逃さない」とする独特の作法は、この時代にほぼ形作られた。当時の大阪は商業の街であり、縁起を担ぐ商人文化と娯楽精神が融合して生み出された粋な遊び心でもあったのだ。