この地域を深く知るうえで外せないのが、山岳信仰と歴史の動乱だ。吉野・大峯の山々は、7世紀後半に修験道の開祖とされる伝説的な山伏・役小角(えんのおづぬ)が修行を積んだ場として知られる。荒行を通して自然と一体化を図る修験道の精神は、この地の峻険な山岳地帯があったからこそ形作られた。
さらに時代が下った南北朝時代、政治的争乱のなかで南朝を開いた後醍醐天皇もまた、吉野の地を拠点として潜伏し、再起を賭けた。吉野山に残る皇室ゆかりの史跡や寺社には、敗者の哀愁とともに、深山に守られた豊かな歴史の余韻が今も漂っている。