宮内庁(旧宮内省)に残された当時の内部日誌や侍従たちの手記、そして海外の外交文書を照合すると、宣言をめぐる国内の受け止め方のグラデーションが浮き彫りになる。宮中内部には、皇室の伝統的権威が失墜することを極度に恐れる保守派の強い抵抗が存在した。彼らは「現御神(あきつみかみ)」の否定が皇統の断絶につながりかねないと激しく危惧していた。
しかし、最終的に採択された文言は、神話を基脈とする絶対的な権力を放棄しつつも、万世一系の皇室が持つ道義的・精神的結びつきを維持する絶妙なバランスを保っていた。海外メディアはこれを「天皇の人間復帰」と大々的に報じたが、国内の当事者たちにとっては、激変する国際環境のなかで皇室の存続を図るための、冷徹なまでの現実主義的決断だったといえる。