『笑顔』を語る上で欠かせないのが、映画監督の三木孝浩がメガホンをとったミュージックビデオの映像美です。本作のMVは、吉岡聖恵の顔を正面から捉えた長回しのワンカット映像と、様々な市井の人々がふとした瞬間に見せる笑顔のカットで構成されています。
特筆すべきは、歌い出しから中盤にかけての吉岡の表情です。作り込まれたアイドル的な笑顔ではなく、今にも涙がこぼれ落ちそうな切迫した表情でカメラをじっと見つめ、時に視線を揺らしながら言葉を紡ぎます。そしてサビを歌い終えた瞬間、ふっと肩の力が抜けたような柔らかい笑顔がこぼれます。
MVに出演している一般のエキストラや子供たち、高齢者の出演者たちが見せる表情も同様です。カメラの前で緊張していた人々が、ふとした声かけによって素の温かい表情を取り戻す瞬間が切り取られており、「笑顔とは作られるものではなく、他者との関係性のなかで自然に零れ落ちるものだ」という楽曲のメッセージを視覚的に完璧に証明しています。