春の風物詩として愛されるメロディであるにもかかわらず、なぜ多くの人々が「怖い意味」を感じ取り、不気味な噂が絶えないのでしょうか。取材班が生物学者や民俗学の文献を調査したところ、そこにはカッコーという鳥が持つ冷徹な生態と、ヨーロッパに古くから根付く不穏な象徴性が深く関係していました。
第一の要因は、カッコー特有の習性である「托卵(たくらん)」です。カッコーのメスはモズやホオジロなど他種の鳥の巣に忍び込み、元の卵を1個くわえ去った上で自分の卵を産み落とします。そして、元の主のヒナよりも早く孵化したカッコーのヒナは、まだ目も開いていない状態で本能的に巣の中にある他の卵や産まれたばかりのヒナを背中に乗せ、巣の外へと突き落として皆殺しにします。仮親の愛を独占し、餌を貪り食って成長するその生態は、人間の道徳観からすればまさに戦慄を覚える背徳的な生存戦略です。
第二の要因は、西洋社会における言語的・文化的な暗黒面です。英語で「寝取られ夫」を意味する侮辱語「cuckold(カッコーの古語に由来)」は、他人の子どもを自分の子と信じて養育させられる男の悲哀を、托卵の習性に重ね合わせたものです。シェイクスピアの戯曲をはじめとする西欧文学において、カッコーの鳴き声は「家庭の崩壊」「裏切り」「死の予兆」を暗示する不吉なサインとして幾度となく描かれてきました。
明るく軽快な童謡の調べを口ずさみながら、脳裏の片隅で「他者の巣を奪い、実子を抹殺して成り代わる」という恐るべき托卵の光景が結びつくとき、聴き手は言い知れぬ生理的嫌悪と恐怖を抱くことになります。この本能的な不協和音こそが、「カッコーの歌には恐ろしい意味がある」という都市伝説的な噂を拡散させる原動力となっています。