歴史の針を江戸時代初期、寛永年間へと巻き戻す。発端は、対馬府中藩の第2代藩主・宗義成(そう よしなり)が、江戸での長期にわたる参勤交代から無事に島へ帰還したことだった。
過酷な海路を越えて主君が戻った喜びを分かち合うため、家臣や町人たちが知恵を絞って献上したのが、この菓子の始まりと伝えられている。当時、砂糖は長崎出島を通じた貿易によってもたらされる最高級の貴重品。それを惜しげもなく餡と生地に使い、南蛮渡来のカステラ生地で巻いた贅沢極まりない菓子は、藩主の旅路の労をねぎらう特別な祝い菓子だった。
「カステラで巻く」から「かすまき」。その明快すぎる名付けの裏には、鎖国下の日本において大陸との外交窓口を担った対馬ならではの、豊かな異文化受容の歴史が色濃く刻まれている。