結論から明確に言えば、自閉症スペクトラムに特有の「顔のかたち」や「目鼻立ち」が存在するという医学的根拠はありません。日本小児神経学会や厚生労働省が示す発達障害の手引きにおいても、外見的特徴を指標とする項目は皆無です。
染色体異常を伴う一部の遺伝子疾患(ダウン症候群や脆弱X症候群など)では特有の解剖学的頭蓋顔面特徴が知られていますが、自閉症スペクトラム自体は中枢神経系における情報処理やシナプス機能の多様性に基づく発達特性であり、特定の顔貌を生じさせるものではありません。
一部の海外研究(豪ロイヤルチルドレンズ病院などのチームによる3D顔面画像解析)において、ASD児と定型発達児の間で鼻の下の長さ(人中)や額の比率にミリ単位の微小な統計的差異がみられたとする論文は存在します。しかし、これは高精度の立体スキャナーを用いた集団統計上のごく僅かな偏向に過ぎず、肉眼で個人の疾患を特定できるようなマーカーとしては臨床現場で完全に否定されています。自閉症診断基準の最新動向(DSM-5-TRやICD-11)でも、診断基準は一貫して「社会的コミュニケーションの持続的な欠如」と「限定的・反復的な行動様式」の2軸のみに置かれています。