昭和のランドセルを語る上で欠かせないのが、化学メーカー・クラレが開発した人工皮革「クラリーノ」の登場です。
昭和30年代前半までのランドセルは、主に牛革や豚革などの天然皮革で作られていました。しかし、天然皮革には以下のような致命的な課題がつきまとっていました。
- 水濡れに極端に弱く、雨に打たれると革が水分を吸って硬直・ひび割れを起こす。
- 原皮そのものが重く、教科書を入れると低学年の児童には過度な肉体的負担となる。
- 職人の手作業による裁断・縫製が必要で、品質の均一化とコストダウンに限界がある。
こうした難題を打破すべく、クラレは1965年(昭和40年)に世界初となる本格的な人工皮革「クラリーノ」の事業化に成功し、ランドセル業界へ投入しました。天然皮革の構造を精密に模倣しながら、特殊な不織布層とポリウレタン樹脂を組み合わせることで、「軽さ」「抜群の耐水性」「均一な品質」「手入れの容易さ」を同時に実現したのです。
発売当初は「本革の安物・イミテーション」と見なされる逆風もありましたが、雨の日でもカバーなしで濡れを拭き取れる実用性と、子どもたちの身体的負担を減らす軽さが教育現場や保護者から熱烈な支持を獲得。昭和50年代にはランドセル素材の主流の座を不動のものとしました。現在では、表面の耐傷性を飛躍的に高めた「タフロック」や、しなやかな風合いを持つ最新グレードへと進化を続け、ランドセル市場の圧倒的シェアを支え続けています。