最愛の妻・弥生さんと生後わずか11カ月の長女・夕夏ちゃんを一度に奪われた本村洋氏。彼が司法の壁の前に立ったとき、法廷には「被害者や遺族のための席」すら存在しなかった。証拠の閲覧すら制限され、加害者の人権やプライバシーばかりが過剰に守られる司法の現実に直面した本村氏は、記者会見で自らの悲痛と司法への不信を率直に吐露し、世間に強烈な一石を投じた。
本村氏の訴えは、同じく理不尽な犯罪に苦しむ当事者たちを結びつけた。やがて結成された「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の中核として活動を広げ、被害者等基本法の成立や、遺族が法廷で被告人に直接質問できる「被害者参加制度」の導入を実現させる原動力となった。個人の悲痛な叫びが制度を動かし、傍聴席に押し込められていた被害者の尊厳を法廷の中心へと引き戻したのである。