なぜかつて医療機関では、判で押したようにPL顆粒が処方されていたのでしょうか。そこには日本独自の医療保険制度と、昭和から平成初期にかけて形成された「医療文化」が密接に関わっています。
かつての診療現場では、多忙な外来を短時間でさばくため、患者が訴える「熱、喉、鼻」の多彩な愁訴を一括でカバーできる合剤が重宝されました。「病院に来たのだから強力な薬が欲しい」という患者心理に対し、4成分入りのPL配合顆粒は費用対効果(薬価の安さ)も含めて最も手離れのよい選択肢だったのです。いわば、医師と患者の双方が暗黙のうちに依存し合った「とりあえずPL文化」が定着していました。
しかし、2000年代以降の臨床エビデンスの蓄積と医療経済の見直しに伴い、この構図は決定的に崩れ去りました。厚生労働省が主導するポリファーマシー(多剤併用)対策や高齢化の進展により、「症状のない病態にまで薬を投げて副作用リスクを上乗せする合剤の無駄」が厳しく指摘されるようになったためです。
海外のガイドラインにおいても、単純な風邪に対する総合感冒薬の一律投与は推奨されていません。症状ごとに必要な薬剤のみを最小限処方する「ターゲット治療(対症療法)」へとパラダイムシフトが完了した現在、漫然とPL顆粒を出し続ける診療スタイルは、エビデンスに乏しい前時代的な処方パターンとして現場から淘汰されつつあります。