実際に、社内や取引先との会話で「奥さん」や「嫁」と口にしたことでトラブルに発展した事例は枚挙にいとまがない。コンプライアンス相談窓口のデータやSNS上の議論から、現場のリアルな摩擦を検証する。
大手金融機関の人事部担当者は、社内の意識調査を踏まえて次のように証言している。「1on1ミーティングの場で、上司が部下に対して『奥さんは元気?』と尋ねたところ、部下から『プライベートへの踏み込みであり、配偶者の呼称としても馴れ馴れしく不快感を覚えた』と相談が寄せられた事例がありました。上司側には悪気がなくとも、受け手側は上下関係の押し付けや時代遅れの感覚を敏感に察知します」
職場で奥さんと呼ぶリスクと評判は、ネット上のリアルな口コミでも如実に可視化されている。パートナーや妻の呼び方ネットの反応をSNSや知恵袋などで分析すると、以下のような手厳しい意見が目立つ。
「商談相手が『うちの嫁がさ〜』と語り出した瞬間、ビジネスパートナーとしての信頼度が一段下がった気がした」
「社外の打ち合わせで上司が取引先の奥様を『奥さん』と呼んでいて、隣で冷や汗をかいた。せめて『奥様』と言うべき」
「『奥さん』という言葉には、無意識に相手の妻を男性側の付属品のように見なすニュアンスが漂うことがある。フラットに話したいときは『ご家族』や『パートナーの方』と表現してほしい」
このように、呼称ひとつで相手に与える「ビジネスマンとしての知性」や「ハラスメントへの感度」の評価は大きく左右される。