脚本家・吉田紀子が紡ぎ出したドラマ『愛するという事』のあらすじは、当時のテレビドラマ界に大きな衝撃を与えました。派手な恋愛遊戯を礼賛するバブル期の空気感から脱却し、誰かを本気で愛することに伴う激しい痛み、孤独、そして人間的な再生に真正面から切り込んだからです。
主人公・藤沢冬樹(本木雅弘)は、心に影を抱えながらも自らの道を模索する青年。一方、ヒロインの水野麻生(鈴木保奈美)は、周囲の期待や整えられた現実の中でどこか満たされない渇きを抱えて生きていました。二人の偶然の邂逅から始まる関係は、互いの痛みに触れ合うことで急速に深まっていきますが、二人を取り巻く家族関係、過去の因縁、そして残酷な現実の壁が容赦なく立ちはだかります。
吉田紀子ならではの鋭利な心理描写は、登場人物一人ひとりの「弱さ」を容赦なく暴き出します。単なる純愛賛歌にとどまらず、エゴイズムと自己犠牲が表裏一体となった大人の葛藤を丁寧に積み重ねていく構成力は、30年以上が経過した現在でも色褪せない緊張感を放っています。