尾畠春夫さんの活動において、全国民に最も強い衝撃を与えたのが徹底した「自己完結の哲学」です。自らの生活原資は、自営業時代に納めてきた国民年金のみであり、受給額は月額およそ5万円台。この限られた年金収入の中で、食費、光熱費、愛車の軽ワゴン車(サンバー)のガソリン代や車検代をすべてやりくりしています。
被災地や遠方へ赴く際も、宿泊施設は一切使わず尾畠春夫 車中泊生活を基本としてきました。車内に敷いた手製の寝具で眠り、食事は持参したパックご飯や梅干し、インスタントラーメンで済ませます。被災者や自治体関係者から「温かいものをどうぞ」と炊き出しを勧められても、「被災地のお米や水、人手を使ってはいけない」と頭を下げて固辞する姿勢は、ボランティアの基本精神を体現するものでした。
一般的な高齢単身世帯の消費支出と比べても、その生活様式は極限まで削ぎ落とされています。「お金がないから何もできない」のではなく、「お金を使わずに工夫して生きる」ことを体現する尾畠さんの生活設計は、物質的な豊かさに慣れきった現代社会において強烈なリアリズムを放っています。