ノストラダムス信奉者が挙げる代表的な「当たったとされる予言」には、以下のような事例が存在します。
- フランス国王アンリ2世の馬上槍試合での事故死(1巻35番):「若いライオンが老いたライオンを打ち負かす」という詩句が、試合中の悲劇と酷似。
- フランス革命とルイ16世の処刑:教会財産の没収や国王一家の逃亡劇(ヴァレンヌ事件)を暗示させた詩。
- アドルフ・ヒトラーの台頭(2巻24番):「ヒスター(Hister)」という言葉が登場し、ナチスの独裁者を予言したと騒がれた。
しかし、これらには明確な反証が存在します。たとえば「ヒスター」はドナウ川の古ラテン語名(ヒステル)であり、人物名ではありません。現代のテキスト分析によって判明している予言が当たらない根本的な理由は、以下の3点に集約されます。
第1に、詩句に年代が明記されたものは極めて稀で、大半は抽象的な単語の羅列であること。第2に、事件が起きた後に過去の詩をこじつける「後付け解釈(事後予言)」の手法が取られていること。第3に、翻訳者が自説に都合の良い単語を選択し、原義を歪曲していることです。人間が偶然の一致に意味を見出してしまう「確証バイアス」が、予言の的中という幻想を作り出していたのです。