昭和の映画界において、今なお語り草となっているのが渡瀬恒彦さんの「芸能界最強伝説」です。空手二段の腕前を持ち、喧嘩っ早い荒くれ者が集まる当時の東映京都撮影所において、誰一人として逆らえなかったという武勇伝は数知れません。映画『狂った野獣』や『暴走パニック 大激突』で見せたスタントなしの超危険なカーアクションなど、身体を張った演技は映画関係者の度肝を抜きました。
一方で、兄の渡哲也さんも学生時代は空手道部で鳴らし、圧倒的な男気と礼儀正しさで知られた人物です。外見のシャープさや内に秘めた闘争心は共通しながらも、表現のアプローチは好対照でした。
「兄貴は太陽、俺は月」——恒彦さんは生前、偉大すぎる兄への敬意を込めてこう語ったことがあります。しかし、周囲のスタッフや共演者は誰もが、恒彦さんの圧倒的な役者魂とストイックさを認めていました。喧嘩最強という看板の裏には、誰よりも周囲に気を配り、義理と人情を重んじる兄弟共通の深い優しさが息づいていたのです。