幽庵焼きを格段に美味しく仕上げる調味液「幽庵地(ゆうあんじ)」の絶対的な基本配合は、醤油 1 : 酒 1 : みりん 1 の等量比です。
この比率をベースに、柚子(ゆず)、すだち、かぼすなどの果汁を全体の5〜10%程度加え、薄切りの輪切り柑橘を漬け汁に浮かべます。醤油の塩分濃度が魚の表面タンパク質に適度な脱水作用をもたらし、みりんの糖分が焼成時に美しい照りと香ばしいメイラード反応を生み出します。
相性の良い魚種としては、身質が繊細で水分を適度に含む鰆(サワラ)、脂の乗りが良い鮭(サーモン)、冬の脂が乗った鰤(ブリ)、上品な白身の真鯛やカマスが挙げられます。また、魚類のみならず鶏もも肉を幽庵地に漬け込んで焼く「鶏の幽庵焼き」も極めて高い満足度を誇ります。
ここで最も重要なポイントが「漬け込み時間」のコントロールです。家庭調理でありがちな失敗が「一晩漬け込んでしまう」こと。醤油の浸透圧により魚の水分が抜けすぎて身がパサつき、柑橘の皮から苦味成分(リモノイド等)が抽出されてしまいます。切り身魚の場合、常温なら約20分、冷蔵庫なら30分程度の浸漬時間が最もふっくらジューシーに仕上がります。