ネット掲示板やSNSで囁かれる「ホクレンの闇」というフレーズ。これを単なるネットスラングとして片付けることはできません。北海道内の複数の酪農地帯で聞かれたホクレン 酪農家の声には、巨大組織に対する愛憎入り混じる複雑な感情が溢れています。
道東エリアで親子三代にわたりメガファームを営む50代の酪農経営者は、重い口を開いて当時の苦境をこう語ります。「農林水産省やホクレンの主導で設備投資を促され、借金を背負って牛舎を拡大した直後に、『生乳が余ったから生産を抑制しろ、牛を減らせ』とハシゴを外された。応じなければペナルティが科される空気のなかで、仲間が次々と廃業に追い込まれていった。あのときの絶望感から、組織への不信感を拭えない農家が今も大勢います」。
現場を特に苦しめたのが、生乳の出荷枠(クオータ)を巡る厳格な管理です。乳牛は生き物であり、工場の蛇口のように出力を自在にオン・オフすることはできません。搾乳を止めれば乳房炎を起こし、最悪の場合は命を落とします。やむなく搾った生乳をその場で捨てざるを得なかった生産者の精神的打撃は、都市部の生活者の想像を絶するものでした。
さらに、ホクレンの手数料や規格基準の厳格さに対する不満も根強く存在します。乳質検査でわずかでも基準に達しない生乳は厳しく撥ねられ、集乳や保管、販売促進にかかる経費が手取り乳価から差し引かれます。「自分たちが泥まみれになって働いても赤字なのに、手数料を確実に徴収していく連合会組織は痛みを分かち合っていないのではないか」というやり場のない憤りが、「クズ」「ブラック」といった過激な批判へと転化している実態が浮き彫りになります。