技の名称に誇大広告的な要素が含まれていたとしても、16文キックの威力と真相について疑う余地はありません。昭和から平成にかけて馬場とリング上で対峙した国内外の名レスラーたちの証言や手記からは、その恐るべき破壊力が生々しく伝わってきます。
かつて全日本プロレスで死闘を繰り広げた「不沈艦」スタン・ハンセンは、自著やインタビューの中で馬場のキックについて「壁に全速力で激突するような感覚だった」と語っています。また、悪役としてリングを震撼させたアブドーラ・ザ・ブッチャーも、「馬場のシューズの底は硬く、まるで鉄板で顔面を張り倒されたようだった」と振り返っています。特番インタビューや当時のプロレス専門誌のバックナンバーを精査すると、対戦相手が口を揃えて強調するのは「逃げ場のない靴底の広さ」です。
馬場自身、自著の手記やインタビューで次のように語っていました。
「足を高く上げているだけに見えるかもしれないが、相手が突っ込んでくるスピードと自分の体重の乗せ方が合致しなければ、ただ足が痛むだけで相手は倒れない。相手の顎の先端へ正確に靴底の真ん中を当てるタイミングがすべてだ」
元読売ジャイアンツのプロ野球投手であった馬場は、類まれな動体視力と空間把握能力を持っていました。相手の突進軌道を瞬時に計算し、顎という急所へミリ単位で巨大な足を配置する高等技術こそが、16文キックを昭和プロレスの必殺技たらしめた真髄だったのです。