江戸川乱歩『芋虫』なぜ発禁に?トラウマ級結末と愛憎の深層を解剖

江戸川乱歩『芋虫』なぜ発禁に?トラウマ級結末と愛憎の深層を解剖

江戸川乱歩『芋虫』なぜ発禁に?トラウマ級結末と愛憎の深層を解剖について徹底解説いたします。専門家の見解をご確認ください。

物語の舞台は、日露戦争で名誉の負傷を遂げたとされる退役軍人・須永中尉と、その妻・時子が暮らす閑静な邸宅です。須永は激戦の砲火によって両手両足を切断され、顔面の半分を火傷で焼失、さらには聴覚と発話能力までも失った状態で帰還しました。世間からは「生ける軍神」として勲章を授与され称えられますが、実生活においては自力で移動することも排泄することもできない、まさに「肉の塊」としての生活を余儀なくされていました。

外部との接触を断ち、世間の好奇の目から逃れるように奥座敷に籠もる夫婦。会話の手段は、時子が夫の胸や額に指で文字を書く「皮膚文字」か、夫が残されたわずかな首の動きで意思表示をするのみです。須永に残された機能は、旺盛な「食欲」と「性欲」、そして時子への絶対的な依存だけでした。

献身的な妻として夫を介護する時子でしたが、密室で繰り広げられる二人きりの生活の中で、彼女の精神は次第に歪んでいきます。かつては美男子で誇り高かった夫が、今や自分の掌の上でしか生きられないという状況が、時子の中に眠っていた強烈な支配欲と嗜虐心を目覚めさせていくことになります。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。